
水がめを抱えて歩く女性。
こういう山間部で暮らしているのは殆どがベルベル系の人々です。
モロッコに元々暮らしていたのはベルベル人で、八世紀に征服民族としてのアラブ人がアラビア半島からやってきました。
戦いに強かったらしいアラブ人は暮らしやすい平野を占領、ベルベル人は自由な生活を求めて山の中に移動しました。
殆どのベルベル人は元々半遊牧生活を送っており、冬は町や村で、春から秋にかけては移動生活をしていましたが、フランス保護領時代の政府の定住化政策により、石造りの家で定住する人が増え、遊牧生活をする人は殆ど居なくなりました。
こんな風に書くと、大昔の歴史のお話のようですが、ベルベル人が定住するようになったのは、たかだか50年、100年前のこと。
彼らのおばあさんやおじいさんの時代のことです。
(もちろん早くから都市で生活していた人々も居ます。)

道沿いで見かけた大きな集落。

無名の集落ですが、有名なアイトベンハッドウと同じような作りです。
アイトベンハッドゥはほぼ観光客のための建物になってしまい、現在生活しているのは数家族のみ、彼らは観光客から得るチップで生計を立てていると聞きますが、この集落では昔ながらの生活が続けられている様子です。
マラケシュ~ウーリカ~ウカイムデンまでの道沿いにはこんな集落が沢山あります。
この入り組んだ建物は、全て近くで手に入る素材/木、土、石などで作られて居ます。
中に入っていないので詳しいことは分かりませんが、きっと、何軒もの家にわかれており、それぞれに人が暮らすスペース、家畜が暮らすスペースがあり、共同の釜や井戸、モスクなどがあるかもしれません。
最近雨が多かったので、草屋根になっているところがあります。
上のほうのバルコニーには手織りのラグが干されています。

段々畑の中に集落があります。

マラケシュからウカイムデンに向かう道は川沿いにあります。
お天気が良かったのであちらこちらで川で洗濯をしている女性を見かけました。
写真に写っている女性は、洗濯物を干した後は、牛を連れて歩いていきました。

イスラム圏の女性と言うと、外で働かないというイメージがあるかもしれませんが、それはアラブ人の習慣です。
ベルベルの世界では、家畜の世話、野外での農作業は女性の仕事です。
男性は何をしているのかと言うと、市場が開かれる日に市に生産物を売りに行ったり買い物をしたり。
その他の日はカフェでのんびりお茶をしたりして過ごしている様です。
家の近くで行われることは農業や家畜の世話も含め女性の仕事。遠くまで出かけていかなくてはならない事は男性の仕事とされているようです。

同じイスラム教徒なのに不思議なことですが、アラブ人とベルベル人の女性をめぐる習慣の違いには色々な理由があるそうです。
1:ベルベル人が暮らしていたのは農村部。外で農作業を行っても、全く知らない外部の人々に見られる可能性が少なかった。
2:女性を隔離する習慣は、土地の相続システムと深く関係している。イスラム法では土地や財産は、女の子にも男の子の半分の相続の権利があるが、女の子が見ず知らずの外部の人と結婚してしまうと土地や財産が分割してしまう。これを防ぐためには一族にとってもっとも有利な相手と結婚させる必要がある。アラブ人の間では昔からイトコ婚が盛んなことが知られているが、イトコ同士結婚すると、財産が分割しないので一番有利であり、一族の力が増す。このような理由で年頃の女の子が外部の男性と恋愛をすると非常に困ったことになる。
地中海一帯で見られる女性隔離の伝統は上記のような理由で始まり、強化されたと言われています。
要するに、勝手な結婚をしないように、一族に取って一番良い相手と結婚するようにと言うことなので、見ず知らずの人の目に触れる可能性が高い町の暮らしでは厳しくなり、可能性が低い村や集落の暮らしではゆるくなる傾向があるようです。
現在のモロッコ女性をめぐる状況は地方により様々です。
ウーリカの様なベルベル人の地域では昔から女性は外に出て農作業などを行ってきました。
マラケシュはベルベル人とアラブ人の比率が同じくらい、外国の影響も多い町なので、かなり開放的です。
ホワイトカラーの管理職など、女性の方が多いのでは?と言う印象がある位です。
フェズやカサブランカは元々アラブ色の強い町なので、状況は異なるかもしれません。
南部のアラブ人の町に行くと、今でも女性は黒い大きな布ですっぽりと全身を覆って歩いています。外でお金を稼ぐために働くという事は殆どありません。

大きな岩の脇で洗濯をする人々。
こっちに上っていらっしゃい!!
と愛想良く叫んでいます。
もちろん道などありません。

車に近づいてきた女の子。
マラケシュからわずか50キロくらいのところで生まれ育ったであろうこの女の子は、どんな人生を送るのでしょうか。
この村で結婚してずっとここで暮らしていくのか、町に出るのか・・・
明日はベルベル人の色彩感覚についてお届けします。
ディアモロッコ/宮本 薫
http://www.dearmorocco.com/
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